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「・・・・っ!!!」
かれこれ彼女の攻撃を避けてどれくらいの時間がたっただろうか。
どちらかといえば戦闘向けとはいえないフリルのスカートは思った以上に重く、長時間の戦闘と過度な行動は膝と足首に地味ではあるものの負担が蓄積される。攻撃を避けるために壁の陰に入った時にようやく私の動きが遅くなっているにも関わらず、トドメをさそうとせず、逃げる鼠をいたぶるかのような笑みを見せながら私がかわせるギリギリを狙って攻撃を放ってくる。本当にドSだ。

「ねぇ、もうオワリなの?もう少し楽しませてよ、選ばれし魔法少女さん....!!」
まるで悪魔のような低く、しかし甲高い声が廃墟と化した街に響く。もうこの街には誰もいない。私が通っていた学校も、クラスメイトも、お父さんも、お母さんも。見慣れた景色はすべて彼女に壊された。

「ねぇ・・・・・・福遠さん・・・・・・・・」
陰に身を小さくし息を整えながら私は彼女に問いかける。
「どうして・・・・どうしてアナタは・・・・・っ!!!!」
向こうから私は見えていないはず。だが声を頼りに彼女は一撃を放ってきた。私はまだ整いきれていない息を飲み込んで、強くアスファルトを蹴る。蹴った箇所から蜘蛛の巣のように日々が入り、まるでガラスが割れるかのような、しかしながらソレとは思えない鈍い音が響く。
「私と一緒に戦うっていってくれたじゃない!!!でも実際、アナタは私の敵で、私を裏切って・・・・・」

地方から東京にやってきた私に最初に声をかけてくれたのが彼女で、同じ魔法少女として週末は"リーヌベージ"と呼ばれる正体の分からないナニかと戦い、人々の知らないところで街を守ってきた。この世界を守ってきた。
それは人々に褒めてもらえるわけでもない。人々の知らないところで私たちが死ぬかもしれない。そんな世界で孤軍奮闘していた私にとって、仲間という存在はとても心強く、そして頼もしくも感じていた。
『一緒にリーヌベージを倒していって、いつか普通の女子中学生として楽しい日常を送ろうね!!』
私と彼女、そして偶然にも私たちが魔法少女だということを知った砂川ちゃんの3人はそう決意し、今日まで戦ってきた。
それなのに、最後の敵が仲間だと思っていた彼女で、砂川ちゃんは彼女に.........

「裏切った?・・・・っはははは!!!面白いこというのね!!!私は一度もあなたを裏切っていないわ。」
「・・・・?」
「最初からあなたを利用していただけ。仲間だと思って裏切られたと勝手に感じているのは、らいぷらちゃん、アナタだけよ。」
その言葉が耳に入ってきた瞬間、私の目頭は熱くなり、攻撃をかわし、電柱を勢いよく上り、さらに蹴り上げて彼女に肉薄し、右手を振りかざした。唯一である武器はもう使えない。でもこの怒りを彼女にぶつけることはできる。逃げていた時とは比にならない速度で彼女の右側。すなわち彼女の死角に入り込み、そして拳を振りぬいた----
「・・・・!?」
彼女の右腕は先の戦闘で私の放ったサガミオオノ・ソードで切り落とし、まして彼女が右利きであることを把握していた。なのに彼女は体を逆に捻り、左手で私の拳を制したのだ。
「あら、私こう見えても元々左利きなのよ。」
冷たく言い放った彼女は次の瞬間、左足を振り上げ、そして伸びきった私の右腕めがけて振り落とした。私の右腕に激痛がはしった。と、思えばもはや腕として機能しなくなったソレをもったまま私自身を投げ飛ばした。驚きと激痛に板ばさみされた私はとっさに受身をとるのが遅れてしまい、鉄筋コンクリートに打ち付けられた。

「・・・・っつ・・・・・・!!・・・・・・・・・」
打ち付けられた全身の痛みと、その何倍の激痛がはしる右腕を庇う。いよいよこれはもう.......
そんな私をみて、彼女がゆっくりと息を吸う。
「さて、そろそろ終わらせましょうか・・・・・・・魔法少女のスベテを・・・・・・・・」