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「朱夏ー、遅刻するわよー!!!」
お母さんのいつもの声で二度寝から少し慌てて起きる。この春に購入した春モデルの携帯を確認すると、ディスプレイにはデジタル文字で0722と表示されていた。
「あああああああ!!!!これ絶対間に合わないって!!!!!お母さんなんで起こしてくれなかったの!!!!!!!!」
急いでパジャマを脱ぎ捨て、昨日出しておいた新品のセーラー服に袖を通す。嗅いだことのない洗剤の良い匂いがどこか新鮮で、実は知らない世界の、いうなれば違う世界線にいる私の匂いのような、私で他人の感じがした。なんだろう、この感覚は------

「朱夏、朝食は!?」
「食べてたら間に合わないから要らない!!!」
髪をとかしながら一気に階段を駆け下りる。リビングでコーヒーをすすっていたお父さんがいかにも「朝から騒がしいやつだ」といわんばかりの視線を送ってきたが、そんなこと気にしている余裕はない。朝食には目もくれず、ただ匂いでイチゴジャムだと分かるまでそう時間はかからなかった。イチゴジャムかぁ、大好きなんだけどなぁ....
とにかく今は遅刻寸前のこの危機的状況をどうにか打破しなければいけない、と甘い誘惑を振り切って、玄関で卸したばかりのローファーに足を入れる。まだ硬い生地が足に馴染むのはしばらく先だろう。はやく馴染めばいいのだけれど。
「それじゃあ、いってきまーす!!!」
私は大きな声でそう言うと、玄関の扉を勢いよく開けた。



「----と、いうわけで、最後にはなりますが、転校生の紹介デス!」
先生がそういうと、教室内が一気にざわめいた。まぁそりゃあ転校生がやってくるってなったらこんなものなのか。私が3年前にこの街にやってきた時もこんな感じだったっけ、なんてことを思い出して、少し可笑しくて笑った。後の五月蝿い男子軍からは「女の子!?可愛い!?」だとか、少し前のほうにいる女子軍からは「どんな子かなー?」なんて会話が聞こえてくる。前の席に座る男子なんか「おろろろろろろろろwwww」と訳の分からない雰囲気を醸し出している。こんなクラスでこれから1年やっていくのかと思うと、楽でよかったと思う反面、ちょっとメンドクサイって感じてしまった。
「じゃあ、村崎さんはいってきてー!」
扉が開き、学校の制服ではない、ちょっと古いデザインではあるものの可愛いセーラー服を来た小柄な女の子が一人現れた。その女の子はゆっくりと歩いて教壇の前に立つ。教室が静まり返っているのは、その見慣れないセーラー服と、同い年かと疑ってしまうくらい幼い顔立ち、それに反して突飛した胸が原因だろう。
「えっと.....村崎 朱夏です。先週引っ越してきたばかりでまだ慣れないことばかりですが、宜しくお願いします。」
幼い顔に小柄な体と反し、凛とした大人の立ち振る舞いを見せ付けられ、教室の空気が一瞬止まったものの男女問わずにどっと沸いた。「おっぱいでけー!!」だとか「ぐうかわ!!!」とか「すごーい可愛いー!!」などといった黄色い声が飛ばされている。ソレに反応して朱夏と名乗った彼女はちょっと照れくさそうに下を向いた。

「村崎、朱夏です、宜しくお願いします。」
しばらくして彼女が隣の席に座った。本来なら男女交互だったり出席番号だったりするのだが、たまたま空いていた席が私の隣だったという、なんだこの漫画にありがちな。
「あー、わたし砂川、砂川 ひかる。よろしくね。」
とりあえず挨拶がてら自己紹介をするのだが、目線はやはりその胸にいってしまう。同じ女子でもこんなにも違うものか、と自身のすっきりした胸と見比べて、ちょっと虚しくなる。いやいや、普通に考えればこれくらいなのだ。14歳の発育なんてそんなものだ。いやそんなものであると信じたい。信じなければいけない気がした。
と、胸を見ている中でふと彼女が指輪をしているのをみた。校則が色々厳しいうちの学校で転校初日からそんな度胸試しというか。3年の生徒指導の先生めちゃくちゃ怖いって評判なのに、知らないとはいえすごいなぁ。
「えっと、村崎さん......その指輪.......」
「えっ.......あれ.......砂川さん、コレが見えるの?」
そうって指にはめていた指輪をゆっくり外して見せてくれた。シンプルなシルバーリングなのだが、リングの一部に小さなハートの刻印が2つ掘られていた。どうやら可愛い子は趣味も可愛いらしい。
しかし彼女は何をいっているんだろうか。"コレが見えるの?"っていわれても、むしろ見えない人がいるのだろうか。
すると驚いた顔をしていた彼女は、私の顔を覗き込んでこういった。
「ねぇ砂川さん.....今夜、ちょっといい?」
[ 2015/07/21 20:49 ] 改造少女らいぷらちゃん | TB(-) | CM(0)